課題図書 2009年10月 人生論ノート2

人生論ノート (新潮文庫)

人生論ノート (新潮文庫)

 幸福は人格である。ひとが外套を脱ぎすてるようにいつでも気楽にほかの幸福は脱ぎすてることのできる者が最も幸福な人である。しかし真の幸福は、彼はこれを捨て去らないし、捨て去ることもできない。彼の幸福は彼の生命と同じように彼自身と一つのものである。この幸福をもつて彼はあらゆる困難と闘うのである。幸福を武器として闘う者のみが斃れてもなお幸福である。

 機嫌がよいこと、丁寧なこと、親切なこと、寛大なこと、等々、幸福はつねに外に現はれる。歌はぬ詩人といふものは真の詩人でない如く、単に内面的であるというような幸福は真の幸福ではないであろう。幸福は表現的なものである。鳥の歌うが如くおのづから外に現はれて他の人を幸福にするものが真の幸福である。

天界の喜びは真の幸福ではない。煩悩を達成したときが幸せではなく、達成するまでの間の幸せを実感出来て、本当の幸せを実感できる。そして、幸せは内面的ではなく、外に現れて他の人も幸せにさせる。