課題図書 2009年9月 レイチェル・ウォレスを捜せ

 いわゆるハードボイルドもの。やはり初めての読む作者のものはなれるまで、時間がかかる。欧米のバックボーンがわからないため、面白味がわかっていないのがつらい。
 今となっては年代物のハードボイルドか。ミッションインポッシブルを見た後に、007を見る感じ。ものすごいCG技術が進んでいるときに、あえて実写にこだわる必要があるのか。
 いや違う。現代の思想的状況や情報社会の中で、あえて取り残された環境で進むストーリーに、現実味が感じられない。ネットや携帯電話なしで、人を探すことって実感出来ないない。そう考えると世の中進んだんだよな。
 いやいやこれも違う。斧さんの意図はそんなところにない。「男はつらいよ」の寅さんを見て、「あんなテキ屋はいないよ」などという味気ない、その道の方の発言になっている。
 スペンサーの味わい深い発言を楽しむのがこの本の正当な読み方だと思う。でも、どうしてもこの訳の言い回しに最後まで慣れなかった。
 あとがきを読むと、完全無欠のスペンサーの弱さが出た初めての作品らしい。弱さと強さ、弱さの中にある強さ。強さの中にある弱さ。相対する立場のコミュニケーションを味わうことが、いくつもあるスペンサー作品の中で、この作品の特徴になっている。